考古学研究室紹介


−2005年度北海道大学文学部案内より


小杉 康
考古知新?!って知ってますか
 
 考古学――君たちは、この言葉を聞いて何を思い浮かべますか。
エジプトのピラミッド、インカ帝国、ナスカの地上絵、イースター島のモアイ像、等々。あるいはインディージョーンズ、マスターキートン、G・ハンコック、などなど。邪馬台国、卑弥呼、しぶいところでは吉野ヶ里、三内丸山…etc。考古学について、あるいは原始・古代について、君たちが興味を抱いたきっかけは様々でしょう。それはそれで大事なことで、そのナイーブな思いはこれからも大切にして下さい。地球上には未だよくわからない“自然物ではないモノ”がたくさんあります。現代の常識ですんなりと理解できないモノに出合うと、私たちはすぐに宇宙人や超能力者、スーパーヒーローなどを登場させてしまいがちです。でもこれでは、考えることの放棄、思考の停止にほかなりません。
 
 本物の考古学者は考えます。
クレーン車もない時代に巨大な石像物を造り、飛行機もないのに上空からでなければ見えない絵を地上に描く――そのような事をやってしまうのが人類であり、人類の文化なのです。考古学者は、それらのことを発掘調査から得られた事実を1つ1つ積み上げて証明してゆきます。人類という“とてつもない生き物”は、どこから来て、どこへ行こうとしているのか?その答えを求めて、考古学者はフィールドでの調査におもむきます。
 
 北大(文学部)で考古学を線文に学べるコースは北方文化論コースと歴史人類学コースです。
どちらも北方文化論講座のスタッフが担当しています。それぞれ「実習授業」として発掘調査などのフィールドワークを用意しています。
 
人類史という視野から人類の未来について、いっしょに考えてみませんか――それが「考古知新」です。




加藤 博文
北方というフィールドに人類史を解く鍵を求めて
 
 私たち人類が生理学的に熱帯型の生物であるというのを知っていますか。
約16年前にアフリカに出現した現代型人類集団は、急速に世界各地へ生活領域を拡大しました。現在、その生活領域は北極の一部と南極を除いた地球上のほぼ全域に及んでいます。地球上に暮らす人類は、わずか1種のみ。しかも生理学的に熱帯型の生物である人類が、多様な生活文化を生み出して地球各地で暮らしているのです。なぜ、どのように私たち人類は、異なる環境へ適応することができたのでしょう。
 
現在ユーラシア大陸東部において最も古い現代型人類集団の痕跡は、モンゴルやカザフスタンそれにロシアの国境が接する南シベリアのアルタイ高原地域で見つかっています。そしてさらに東アジア各地に順次、その痕跡はひろがっていくのです。この状況を人類学や考古学では、人類の適応行動の中の寒冷環境への適応として理解し、人類集団に飛躍的に高い適応能力、生活技術、そして意識構造が生み出されたのではないかと考えています。現代型人類集団の本質的能力の開発を解く鍵が、高緯度地域、北方地域への人類集団の進出と適応という現象に隠されているのです。
 
 近年「北東アジア」や「東北アジア」という地域研究を展開する大学が増えてきました。しかし、北方文化論という地域研究をカリキュラムとして設定する大学は日本で極めて稀です。北海道大学文学部を特色づける領域の一つと言えるでしょう。このコースに展開されている学問領域は、過去の人類史から現在の人々の営みに至るユーラシア大陸から太平洋沿岸地域に広がる北方圏の歴史・言語・文化を対象としています。北海道島は、この北方圏に位置しています。北海道の大地から広く北方圏の世界を、そこに展開された人類の歴史と文化を考えてほしいのです。そこには、きっとこれまで知らなかった私たち人類の性質、私たちは何者で、どこから来てどこへ行くのかという問題も見えてくるでしょう。