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2004. 6. 12
新プロジェクト企画 「カルト問題と社会秩序」
提案者 櫻井義秀 (北海道大学)
1 問題意識
1995年のオウム真理教事件以降、日本は社会問題としての「カルト」に直面した。精神医学・心理学者が、アメリカの反カルト運動から「カルト」論や「マインド・コントロール」論を導入して、「カルト」団体の特質や信者の精神状態を説明したことから、特定教団による「宗教トラブル」が「カルト」問題としてマスメディアで取り上げられるようになった。宗教研究者は、「カルト」の基準が曖昧であること、「マインド・コントロール」で入信や教化を十分に説明できないとして、彼等の言説に違和感を表明してきた。しかし、宗教の暴力にどう立ち向かい、「被害者」にどう対処するのかという具体的な事柄について、宗教研究は反カルト運動ほど説得力のある議論を展開してきただろうか。
従来の「カルト」研究の限界は、研究者自身も問題に巻き込まれているという当事者性の認識の希薄さと、対象の設定が不適切であったこと、それによって問題の射程に奥行きを欠いたことに由来する。宗教研究は、反カルト運動同様に、「カルト」を実体としての教団組織、「マインド・コントロール」を具体的な布教・教化手法として、その議論の是非を考えてきた。しかし、これらの概念は実体ではない。社会的葛藤の所在を示すシンボルである。
例えば、「カルト」はアレフの信者達と世田谷区烏山地区住民の居住空間をめぐる葛藤の中に現れる。「マインド・コントロール」は統一協会脱会信者と教団における入信の「自己決定権」をめぐる争いの中で出てきた問題である。無差別テロや霊感商法といった明白な犯罪行為への批判とは別に、「暴力の蓋然性」に対する恐怖・怒りが地域住民の生活圏を侵害するものとして「カルト」に実体化され、人権侵害の蓋然性が特定教団において「マインド・コントロール」として問題にされるのである。「カルト」問題の研究は、教団や宗教行為ではなく、教団と社会、信者と市民に間にある葛藤、価値観や生活様式、ふるまい方の相違に着目し、社会問題のありようを分析するべきである。
「信教の自由」「居住・移転の自由」「集団・結社形成の自由」は基本的人権であるし、社会が護るべき公共的価値でもある。「カルト」問題では、具体的な社会生活においてこれらの諸価値が葛藤する局面が表れる。それらの葛藤が市民運動や裁判の中で明確化され、協定や裁定がなされるなかで、社会における人権や公共性の具体的中身が作られる。皮肉にも「カルト」問題は、社会の公共圏形成に役立っているのである。そこで、次に問うべき課題は、当該社会のいかなる価値やルールと「カルト」視される教団は葛藤を起こしているのか、その葛藤を当該社会はどのような言葉、論理で問題化し、問題解決の道筋を考えているのかということになる。
2 研究の方法等
2-1 プロジェクト期間
2004年7月から3年間ないしは4年間
2-2 メンバー
当学会会員である渡辺学氏、ロバート・キサラ氏、弓山達也氏には、本プロジェクトと同名の科研費研究にも加わって頂いている。カルト問題の調査研究に関心を持つ研究協力者ないしは、情報交換を行いたい学会会員の参加をお願いしたい。
2-3 活動内容等
研究代表者が遠隔地にいるので、普段はML等での情報交換を行い、年1,2度の研究会を企画する。その他は、各自の調査研究ないしは共同での調査研究が可能であれば考えたい。
2-4
「宗教と社会」学会大会において、1度テーマセッションを開催する。研究成果を学会誌等で発表する。
2-5
プロジェクトは学術的な調査研究の推進、情報交換を目的としているものであり、特定教団に対する批判や対策等を目的としたものではない。しかしながら、問題の性質上、研究者の立場性や研究対象への評価を問われることも考えられる。それに関してはプロジェクト参加者個々人が判断すればよいことであり、プロジェクトはなんら参加者の立場を拘束するものではない。
2-6
研究の内容としては、1)カルト問題の典型として、特定教団と元信者・関係者との葛藤、特定教団と地域社会の葛藤、2)信教の自由、人権といった公共的価値と、社会の公益といった共同主義的価値との調整といった問題、3)日本のカルト問題と他地域(西欧、アジア諸国)との比較、4)カルト問題の周辺にある諸問題等を当面考えている。
2-7
ご関心のある方は、櫻井までメールにてご連絡ください。
E-mail:saku@let.hokudai.ac.jp
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