最終更新:2002-04-07

JIS漢字とインターネットFAQ集(池田証寿編)

このFAQ集は、2001年度(平成13)第1学期開講の文学部・国語学演習(池田証寿担当)で作成したものです。受講者の見解を尊重する方針でまとめました。(2002年4月7日、池田記)

作成FAQ一覧

83JIS漢字で、「摑」が「掴」、「瀆」が「涜」のように変更されていますが、それはなぜですか。
JIS漢字の「包摂」とは何ですか。
83JIS改正と常用漢字表・人名用漢字別表との関係はどのようなものだったのですか。また、改正にそれらの漢字表はどの程度影響を与えたのですか。
JIS漢字の制定、およびその改正に一般の人が意見を述べる機会・参加する機会はどのように設けられているのですか。
JIS漢字の配列はどのようになっているのですか。
JIS漢字として制定された漢字はどのような漢字ですか。
「幽霊文字」とは何ですか。
レポートをパソコンで書いているのですが、使えない漢字があります。使えるようにできますか。
ネット上での国語学研究の発表は、レポート・論文を書く際に信頼して利用してもよいでしょうか。
ネット上での国語学研究発表の内容は、書籍による研究発表と比べてどんな特徴を持っていますか。
「電子書籍」とはなんですか。
電子書籍のメリット/デメリットは何ですか。
インターネット上での発言をめぐって裁判が起こったことはあるのですか。
インターネット上で有害な情報が流れた場合、どういった対応がなされるものなのですか。
顔文字にはどのような種類のものがあるのですか。
顔文字はどうして普及したのですか。

Q. 83JIS漢字で、「摑」が「掴」、「瀆」が「涜」のように変更されていますが、それはなぜですか。

A. 83JISすなわちJIS C 6226-1983はさまざまな変更を行いました。

まず、常用漢字表(1981年、35年間続いた当用漢字表が廃止され、常用漢字表が新たに内閣訓令として告示)、人名用漢字別表に合わせて次のような字体変更、追加を行いました。

なぜ以上のような字体変更、字体入替が行われたかについては、規格表附属の解説に次のようにあります。 「使用頻度が高い、又は内閣告示や日本工業規格等に根拠のある漢字は第1水準とし、その他の漢字は、第2水準とした。」(JIS C 6226−1983 情報交換用漢字符号系 解説) 

政令漢字について変更を加えたのは、あくまで「政令」ですから、納得がいきますが、それではなぜ政令漢字以外にも変更が及んだのでしょうか。 

それは、部分字形の統一という83年改正の委員会がうちだした独特の主張を実現するためでした。部分字形とは、偏(へん)や旁(つくり)のことのようです。「鷗」そのものは常用漢字表にありませんが、「欧」や「殴」が常用漢字表にあるので、「区」という偏の形状(部分字形)をそろえるために「鴎」にしたのです。規格票では、これを「部分字形の統一」と称しています。 

字体入れ替えも同じ論理でおこなわれました。「桧」も「檜」も常用漢字表にはありませんが、「会」という字が常用漢字表にはいっていることを根拠に、第2水準だった「桧」を第1水準に、第1水準だった「檜」を第2水準に移動させたのです。「壺」と「壷」も、「亜」が常用漢字表にはいっていることを根拠に、「壷」を第1水準、「壺」を第2水準に変更しました。(遠藤)

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Q. JIS漢字の「包摂」とは何ですか。

A. 字形の違いがわずかなものは、同一の区点位置を与えることです。例えば「高」と「」は異なる字形ですが、JIS漢字のコード表では、同じ文字コード「57 98」と表されています。

まず、常用漢字表(1981年、35年間続いた当用漢字表が廃止され、常用漢字表が新たに内閣訓令として告示)、人名用漢字別表に合わせて次のような字体変更、追加を行いました。

「高」と「」は異なる字形ですが、こうした存在を符号化する為には、それらの図形的な差を無視して 抽象化しなければなりません。なぜなら、すべての字形に符号を振るのは、現実的ではないからです。

どの程度まで包摂するか、その規準が「包摂規準」と呼ばれるものです。97JISつまり、JIS X 0208:1997は過去の規格では 例示にとどまっていた漢字の包摂規準を、185の部分字体の間の関係として、明確に定義しました。 例えば、包摂は包摂されました。

文字コードの規格と、その字体包摂の規準は言語としての文字に対する規範ではありません。 JIS漢字とその包摂規準は、文字を符号化して交換する際の抽象化に関する合意であって、文字自体に対する規範ではないのです。(遠藤)

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Q. 83JIS改正と常用漢字表・人名用漢字別表との関係はどのようなものだったのですか。また、改正にそれらの漢字表はどの程度影響を与えたのですか。

A. 83年に行われたJIS改正と常用漢字表・人名用漢字別表との関係は、実に密接なものでした。この2つの漢字表がなければ83JIS改正はなかったと言え、また、83JIS改正によって悪夢のような混乱が生じることもなかったと言えます。

83JIS改正の主な内容は、字形変更と字体の入れ替え、すなわち旧字体から新字体への簡略化を行ったことに集約されます。他にも、第1水準と第2水準の漢字の入れ替えや簡略字体の追加などが行われ、ユーザーたちはその使用を強制されることとなりました。その結果、これまでの互換性に従って作られていた文字フォントやコンピュータ上のデータはこの変更に間に合わず、表示や印刷を行う製品によって字体が違ってしまうという問題が発生することとなりました。これが、83JIS規格が悪夢と批判されることとなった由来です。つまり、83JIS改正の目的は、各漢字に統一性・一貫性を与えるためだったにもかかわらず、中途半端な入れ替えや追加を行ったために、かえって大混乱を引き起こしてしまったのです。

では、このような混乱を起こす背景には何があったのでしょうか。

そこには、81年に公布された常用漢字表と人名用漢字別表の改正がありました。83JISはこれら漢字表改正に合わせて、字体を変更することにしたわけです。二つの漢字表は、この改正の目安として使われるはずだったものの、結果的には大きな強制力を持ち、悪夢のような規格を生み出した一因となりました。

その常用漢字表ですが、それは内閣訓令として告示されたものでした。一般社会で分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安となるもので、以前に内閣から告示されていた当用漢字字体表を基礎として、1,945字の漢字を含んでいます。

また、常用漢字表と共に81JIS改正に大きな影響力を与えた人名用漢字別表は、「常用漢字表には載せられていないが、子供の名前に用いてもよい」と定義される漢字285字を掲載しています。83JIS改正で変更・追加された字体「槇・遙・揺・堯」、および簡略化された字体「槙・遥・揺・尭」は、この人名用漢字別表の改正に追髄したものです。

確かに、JISは日本工業規格であるが故に、内閣訓示令である常用漢字表や人名用漢字別表に乗っ取ったものでなくてはなりません。しかし、83JIS改正の場合、政令文字以外の漢字をもそれら二つの漢字表に従って変更・改正(例えば、鴎のへんを區から区へと変えた)してしまったのです。本来の基準を大幅に超えた形で常用漢字表と人名用漢字別表が83JIS改正に影響を与えたことは、混乱した結果から明らかだと言えるでしょう。(野刈)

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Q. JIS漢字の制定、およびその改正に一般の人が意見を述べる機会・参加する機会はどのように設けられているのですか。

A. JIS(Japanese Industrial Standard)とは日本工業規格のことであり、国内での鉱業製品や工業製品の品質統一のために、法律(工業標準化法)で決められた標準の規格のことを意味します。このJISを管轄しているのが「経済産業省(旧 通商産業省)」です。故に、JISに対する意見や要望、疑問の根本的な受け皿を果たすのは、この「経済産業省」だと言えます。しかし、JISはこの「経済産業省」で独自に決定されているわけではなく、「日本工業標準調査会」で規格の審議が行われています。これら二つの機関は国が主体となっています。

しかし、JIS漢字の場合、制定は国による二つの機関で事足りているわけではありません。「経済産業省」「日本標準調査会」を経て、次には民間の「日本規格協会」そして「JCS委員会」で、JIS漢字規格の制定・改正がなされているのです。すなわち、JIS漢字の場合、国と民間の共同作業によって作り出されていると言えます。

JIS漢字は五年ごとに改正がなされていますが、その内容は前述したような四つの機関だけではなく、それらの機関に属している個人や団体(例えば、東京国際大学など)が独自にホームページ上で発表している例があります。また、そこで一般からの意見や要望、疑問などを受け付けているところもあります。特に97年に行われたJIS改正の原案委員会(特に、委員長である芝野耕司氏)は、改正の作業状況や進捗状況などを解説するホームページや公開レビューを設けるなどして、参加者の幅を大きく広げようとしました。これらは雑誌やネットワーク上の媒体で紹介されることで、コメントの募集を日本・世界各地に知らしめることとなり、97JISは部分的にではあれど一般の人が参加しえた改正となりました。

また、前述したような改正の意見募集はこれまでのJIS漢字、つまり97JISを対象としたものでしたが、これから制定されようとする新JIS(2000JIS)についての意見なども、機関側は受け付けようとしています。2000JISは97JISの文字コードを拡張することを目的としています。すなわち、これまで表外漢字として表すことが出来ないとされていた文字をも、JISと関わらせようとしているのです。(野刈)

【2000JISに関連するULRのアドレス】

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Q. JIS漢字の配列はどのようになっているのですか。

A. JIS漢字は、第1水準と第2水準では異なる漢字の配列方法を採っています。 第1水準は代表音訓配列、第2水準は部首画数順配列が用いられています。

第1水準字は、「亜(ア)唖(ア)娃(ア)阿(ア)哀(アイ)愛(アイ)挨(アイ)姶(アイ)逢(アイ)葵(あおい)・・・」 と始まっていて、アから順に並んでいます。第1水準は、漢字の代表的な音、 または音がない国字や訓のほうが一般的である漢字は訓によ る五十音順の代表音訓配列が用いられています。

第2水準字は、「弌丐丕个丱丶丼丿乂乖・・・」と並んでいます。 第2水準は部首画数順に配列されています。部首画数順というのは、 康煕字典(1716年、清の康煕帝の勅命によりつくられた字書)に基づき部首 を214にわけ画数順に並べ、同じ部首内では画数の少ないものから順に漢字 を配列する方法です。たとえば第2水準の2番目と3番目の漢字を見てみると 「丐」(カイ)と「丕」(ヒ)はともに部首番号1の「一」という部首の漢字ですが 部首内画数は3と4になるので、「丐」が先、「丕」が後になります。

第2水準にある漢字は読みが難しいものが多いので、部首による配列方法が採られたと考えられます。

第1水準字が代表音訓による配列であるのは、JISが制定された1978年の前年、常 用漢字表制定のための第1試案「新漢字表試案」が発表された影響があると思います。こ の漢字表は、従来の政令漢字表(1946年の「当用漢字表」、1951年の「人名用漢字別表」) が部首配列法を採っているのに対し、音訓による配列になっています。 新しく作られる常用漢字表が五十音順による音訓配列を日常的な日本語を表す ために使い良いとしたことは、JISの配列方法の決定に作用したと考えられます。(上野)

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Q. JIS漢字として制定された漢字はどのような漢字ですか。

1978年、パソコンでのデータ処理や情報交換のために制定されました。通常の国語表記ができることを目標に、37の漢字表が集められ、そのうち28資料以上に現れる漢字をまず、第1水準漢字集合として、重み付けによる選定を行いました。さらに、都道府県市町村の地名と人名を表すことができるようにし、専門家の調整を加え、第1水準漢字集合(2,965字)を決定しました。第2水準漢字集合は、「標準コード用漢字表(試案)」(情報処理学会)6,086字、「行政管理庁基本漢字」2,817字、「日本生命収容人名漢字表」(人名)3,044字、「国土行政区画総覧使用漢字」(地名)3,251字、これら4資料のいずれかに現れ、第1水準字集合に含まれなかった漢字の全てを制採用しました(3,385字)。

第1水準の基本となる重み28以上の漢字1,972文字については、当用漢字1,850文字、常用漢字1,945文字とほぼ同じ漢字数で、ほぼこれらの漢字表に対応します。

そして、これに当用漢字や常用漢字が適用除外としている固有名詞の表記に用いる地名用及び人名用漢字を補い、一般での利用をもとに修正したものが第1水準字です。

第2水準漢字集合は上記の主要4漢字表中の漢字で第1水準に収められなかった地名・人名用漢字、行政情報処理用漢字及び国語専門分野用漢字を収めたものです。

JIS漢字はその後、1983年に4字、1990年に2字漢字を追加し、また1990年には、JIS基本漢字で規定されていない文字を必要とする利用者のために、5,801文字の漢字を補助漢字として設定しました。

また第3水準、第4水準として約5,000字の拡張文字集合が追加されました。現代日本語を符号化するために十分な文字集合となるようJIS漢字は、改定されてきています。(上野)

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Q. 「幽霊文字」とは何ですか。

A. 「幽霊文字」は笹原宏之さんが作った述語です。「幽霊部員」や「幽霊会社」に擬して作られました。「辞書や文字表の類に載せてあるが、典拠がみつからず、かつ実際に使用された証拠もなく、現実に存在しないような漢字式の字形や字体」(笹原1993)と定義されています。

かつて、JIS漢字には読みも意味も分からないようなものが混じっているとの批判がありました。1991年8月6日の毎日新聞夕刊に、「漢字のユウレイ」(小駒勝美)と題する記事が掲載されています。

ちょっと見たところいかにも漢字のようだが、読みも、意味もわからない。漢和辞典にも、国語辞典にも見当らない。5万字がでている『大漢和辞典』にもない。実用を目的としたJISコードの中に、なぜこんな「使いみち」のわからない字がはいりこんでしまったのか−考えてみると気味が悪い。

このような発言を受けて笹原さんによる一連の「幽霊文字」探求が始まりました。まず、JIS漢字の中から「幽霊文字」の候補として、『大漢和辞典』に収録されていない文字と、『大漢和辞典』に収録されていても漢籍の出典を示していない文字とを取り出します。その後の分析作業は大きく2段階に分けられます。第1段階は国字・異体字の捜索。そして第2段階が『国土行政区画総覧』との対照作業です。これにより『大漢和辞典』に収録されていない文字の多くが地名の文字であることが明らかになりました。

例えば、「垉[52-21]」は愛知県の地名「垉六(ほうろく)」から採用されたものです。筆者による現地調査では、「垉」ではなく「抱」を使うことがあるようです(写真1写真2参照)。だんだん「幽霊文字」になりつつあるのでしょうか。

写真1 コンビニエンスストアのレシート 

写真2 店員さんの自筆

また、疑問字の一部にはJIS漢字の選定作業の間に生じた写し誤りによって、字体が変わってしまった「誤掲出字」があることも分かりました。「妛[54-12]」は滋賀県の地名「脉原(あけんばら)」の「アケン」を作字する時に、「山」と「女」を貼り合わせた際の紙の影が一画と誤認されたものです。けれども、「妛」は『寛元本字鏡集』に見え、これはJIS漢字と無関係に偶然にも字体が一致してしまった「暗合」例です。つまり、他人の空似なわけですが、笹原さんの定義に従えば「幽霊文字」には当たりません。

では、JIS漢字に「幽霊文字」はあるのでしょうか。典拠となる使用例も確認できず、 他人の空似の例も見つからない文字は「彁[55-27]」ただひとつです。「幽霊文字」と呼んでもよいものはこれだけでしょう。

笹原さんの探求によって、「幽霊文字」の候補はそれぞれ使用例を見つけられて、「成仏」を果たしたことになります。ところが、有名になりすぎたためか「幽霊文字」はまだ「成仏」しきれずにいるようです。横山詔一他(1998)には再び「幽霊文字」が登場します。ここで言う「幽霊文字」の候補は、「『新字源』や『大漢和辞典』にない字」、「『大漢和辞典』にあっても出典情報が示されていない字」、「JIS漢字選定時の資料『対応分析結果』(1972)に出典が『国土行政区画総覧』しか挙げられていない字」です。JIS漢字の出典研究のために、いわば作業上の概念として生み出された「幽霊文字」が、辞書非掲載字や地名の文字にまで範囲が拡大されています。1997年のJIS漢字改訂によって出典研究が一段落した今日、「幽霊文字」という用語をこのように使う意味がどこにあるのでしょうか。(高田)

<参考文献>

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Q. レポートをパソコンで書いているのですが、使えない漢字があります。使えるようにできますか。

A. パソコンで使えない漢字を使えるようにする方法はいくつかあります。

パソコンで基本的に使用できる漢字は、JISコード表に含まれている漢字です。JISコードとは、日本で一般的に使われている文字コードです。コンピュータが処理できるのは数字だけですので、文字を扱うためには、文字に数字を割り当てる必要があります。どの文字にどの数字を当てるのか、というのが文字コードです。JISコードでは、JISが数字を割り当てていない文字は使用できません。日常生活において文章を作るに場合には、JISコード表の漢字だけで足りるでしょう。しかし、歴史や古典のレポートを書く場合、歴史的な人物、文献などで使われている漢字の中にはJISコード表に含まれない漢字もあります。

しかし、パソコンで使える文字コードは、JISコードだけではありません。ユニコードという文字コードがあります。ユニコードは世界中の文字を1つの文字コードに収めるという目標で制作されています。その中には、日本の漢字だけではなく、台湾、中国、台湾、韓国の漢字も含まれています。OSあるいはワープロソフトがユニコードに対応しているのであれば、ユニコードに含まれる文字を使用することができます。

また、今昔文字鏡というソフトウェアがあります。今昔文字鏡は、すべての漢字が検索できるように、という目標で制作されたソフトです。また、検索した漢字を使用できるフォントを持っています。フォントとは、文字コードによって数字を割り当てられた文字を、モニタなどでどのように表示するかという、文字のデザインの情報です。広く使われているのは、明朝体やゴシック体などでしょう。普通、山と打てば明朝体の山やゴシック体の山が表示されます。しかし、極端な例として、山という文字に”川”というデザインを当てれば、山と打って”川”と表示することも可能なのです。

ユニコードか今昔文字鏡を使えば、たいていの漢字は使用できます。それでも使用できない漢字があった場合には、自分で文字を作る方法もあります。外字エディッタというアプリケーションで作ることができます。外字とは、文字コードに含まれない、文字コードの空いている番号を割り当てた文字です。外字エディッタでは、文字コードの空いている番号に自分で作成した文字を割り当てます。ただ、こうして作成した文字を他のパソコンで表示しようとしても、そのパソコンには外字のデータがないため、表示されないでしょう。(浜)

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Q. ネット上での国語学研究の発表は、レポート・論文を書く際に信頼して利用してもよいでしょうか。

1. 学術的な信頼性とは

ネット上の研究発表だけでなく、図書にも様々な読者を対象としたものがあります。図書の場合、それが論文・レポートに引用しても問題ない本であるかどうか、どのような基準で判断したらよいでしょうか?1つの基準としては、最低限守られなければならない約束事が守られているかどうか、ということがあります。例えば、責任の所在を明らかにしているかどうか、という点が挙げられます。本であれば、その著者が示されているかどうか、共著の場合は、それぞれの箇所の担当者がはっきりしているかどうか、ということが重要です。このような点が守られていないと、研究を重ねていく上で、混乱が起きる可能性があります。複数の人が研究を進めていく上で問題が起きないような配慮がなされているかどうかが、その研究発表の信頼性に大きく関わると言えるでしょう。

また、ネット上の研究発表、図書による研究発表の両方に言えることですが、 その内容が信頼するに足るものであるかどうかは、常に自分自身で判断しなければなりません。 資料が引用されている場合には、それを実際に参照するなどして、検証を行ないつつ利用することが必要です。

2. ネット上での研究発表の信頼性について

図書にも様々な読者を想定したものがあるように、サイトにもそれぞれに目的があります。中には、匿名で発表されたものもありますが、1で挙げたような責任の所在という点から、レポート・論文に引用する上での問題もありますので、注意が必要です。また、ネット上での研究発表においても、書籍の場合と同じように、参照して引用した文献名を明記し、先行研究への配慮をすることが必要です。この点が守られていないものをレポート・論文に引用してしまうと、誰の意見なのかわからないものを引用してしまうことにつながります。よって、このような研究発表を利用することには、問題があると言えます。

他に、ネット上の研究発表特有の問題もあります。例えば、書籍の場合は、その内容について編集者のチェックが為されることが多いのですが、ネット上の研究発表では、そのようなチェックが行なわれないために、内容の誤りなどに気付きにくい、ということがあります。インターネットは、情報の発信が容易である反面、このような欠点もありますので、利用する際には注意が必要です。

しかし、ネット上の研究発表は、図書にはない利用方法もあります。例えば、ネット上に仮に発表して、他の人の意見を求め、よりよいものにしていくということもできます。また、学術書にすると採算がとれないというような場合にも、ネットを利用すれば研究発表を行なう機会が持てる場合もあるでしょう。このような点から、今後ネット上での研究発表が発展していく可能性も考えられます。(石垣)

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Q. ネット上での国語学研究発表の内容は、書籍による研究発表と比べてどんな特徴を持っていますか。

1. ネット上での国語学研究発表の現状について

国語学研究発表をしているサイトを探すには、1 検索のできるサイトを利用して探す、2 リンクをたどる、等の方法がありますが、東北大学の後藤斉氏作成の「国内言語学関連研究機関wwwページリスト」(http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/kanren.html)が便利です。このリンク集では、国内で言語学に関係する研究を行なっている大学などの研究機関や、学会のサイトが多数紹介されています。各サイトの具体的な内容としては、学会・研究会で行なわれた発表のまとめ、サイトを運営している研究者の論文、などが主となっています。論文については、ネット上でしか発表していないものもありますが、書籍に掲載する前の段階でネット上に発表したり、逆に、書籍の形で発表したものをサイトに掲載していることもあります。例えば、岐阜大学の佐藤貴裕氏のサイト(http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/ron.htm)にある論文集には、論文を引用する場合には掲載誌などの方から行なうよう注意書きが付されています。このような注意書きは、書籍の形で発表したものの方を、正式のものとする考え方に基づいているとも言えます。

2. ネット上での研究発表と、書籍による研究発表との比較

ネット上で行なわれている国語学研究発表を見ていくと、概説的な内容を含んだものが少ないことがわかります。中には、大学の教官が学生向けに概説的なことを解説しているページもありますが、学会や各種研究機関のサイトでは、基本的な事柄は前提として記述されていることが多く見られます。これは、対象とする読者の相違によるものとも言えますが、書籍では網羅的な内容の概説書が多く刊行されており、この点でネット上の研究発表との差を指摘することもできます。他にも、ネット上の国語学研究発表をその内容の分野という点から見ると、書籍と比較して、1 方言を扱ったものが多い、2 教育・外国人教育に関するものが多い、3 現代日本語を扱ったものが多い、などの特徴を持っていることがわかります。これは、インターネットの特徴である、情報収集の容易さ、地理的距離にとらわれないこと、音声・画像データを扱うことが可能、といった利点を利用した結果だと言えるでしょう。例えば、東京都立大学のダニエル・ロング氏のサイト(http://nihongo.human.metro-u.ac.jp/long/index-j.html)には、「オンライン方言認知地図集」と題した、150種のカラー地図が掲載されています。これらの地図を書籍の形で出版するには、色数も多くコストがかかる可能性もありますが、ネットの上ではそのような制約はあまりないため、その特徴をうまく利用している例として挙げることができます。(石垣)

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Q. 「電子書籍」とはなんですか。

A. 「電子書籍」とは、“書籍(写真や絵を中心としたものも含む)の内容を電子化したもの”の呼び名のひとつである。「電子ブック」「電子文書」「電子本」などと呼ばれることもあり、名称は統一されていない。書籍の体裁を整えていない個人の日記や小説などはこのようには呼ばれない。

読者は電子データを通信回線経由でダウンロードし、画面上で読むことができる。データ形式には、テキスト、ドットブック、PDF、CXTなどがあり、読者が選択できる(逆にいえば、まだ規格が統一されていないということでもある)。

「電子書籍」は、流通の方法によって大きくパッケージ型と、ネットワーク型に分けることができる。  パッケージ型には、CD-ROMに入った百科事典や、雑誌論文のデータベースなどがある。全数十巻というとても持ち運びのできない百科事典も一枚のCD-ROMに入ってしまうので、まったくかさばらない。それだけでなく、最大のメリットは調べたい項目を探す手間がはるかに少なくてすむことである。

こうしたパッケージ型に対して、ネットワーク型の「電子書籍」はインターネットなどから手に入れることができる。本を読みたいと思ったら、書店に行って買うか図書館に行って借りるかしなければならなかったが、最近は居ながらにしてパソコンから欲しい本が入手できる。  自宅のパソコンからインターネットに接続すると、いくつかの「電子書店」のホームページを見ることができる。例えば、検索ソフトを使って「電子書店」と入力すると、いくつかの店が紹介される。そのインターネット上の書店から「電子書籍」を手にいれたり、家庭のパソコンやノートパソコンなどの携帯端末で読むことができる。  このように、「電子書籍」には、パッケージ型とネットワーク型があるが、どちらも本の作り方は基本的に同じである。「電子書籍」は、百科事典や小説など文字データを中心にして作られている。しかし、一方では、写真集・コミックなどのいわゆる画像のデータを中心に作られたものも増えてきている。大容量高速通信を可能とするブロードバンド化が進むと、画像データは「電子書籍」が中心になるという予想もある。(文野)

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Q. 電子書籍のメリット/デメリットは何ですか。

A. (参考:電子書籍という潮流 http://www.renya.com/textware/textware.htm
以下は、上記のサイトをもとに、私見を交えて再構成した)

<メリット>

1. 絶版が無くなる

これは、紙という物理的な制約から解放された結果、絶版という行為そのものが意味を持たなくなると言われているからである。実際に、この絶版がなくなるというメリットを生かしたプロジェクトは紙の分野でも、オンデマンド出版などの形で取り入れられている。

2. 誰でも情報を発信できる

インターネットにつなげるパソコンさえあれば、誰でも情報発信者になれる。実際に、個人のホームページで10万件を超すアクセスを獲得している例は珍しくない(ちなみに、書籍は10万冊も売れればベストセラーと呼ばれる)。また、メールマガジンの形で読者を獲得する方法も急速に普及している。内容が充実している電子書籍も多く、特にパソコン関係の情報を仕入れるには紙媒体よりも内容的に優れている場合が多い。

3. 応用が容易

紙媒体と比べて、引用・編集が容易であり、情報の整理にも手間取らない。

カラーテキストをそのまま引用することも容易である。

4. 身体的なハンデを補える

電子書籍をパソコンが読み上げる機能、文字テキストを点字テキストに変換して点字用プリンタで打ち出す機能など、現在実用化に向けて開発が進んでいる技術がある。これらが実用化され、商品化されて普及すると、障害を持つ人や高齢者であっても容易に情報収集が行える。

<デメリット>

1. 作品の絶対数が少ない

大枠として、パソコンの普及率に制約される上、商業化が始まったばかりであり、作品数は紙媒体と比べると雲泥の差である。今後増えていくことは間違いないだろうが、そのペースは未知数である。

2. ディスプレイの問題

電子書籍を読む(見る)ためのメインとなるのは今のところパソコンのディスプレイだが、これは紙の鮮明さには太刀打ちできない。芸術作品を閲覧する場合などには不向きである。また、「目が疲れる」などの身体的な制約もある。

3. データ形式や名称の不統一

発展途上の媒体なので、統一されていないものが多い。そのため、検索や環境設定に手間どることがある。(文野)

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Q. インターネット上での発言をめぐって裁判が起こったことはあるのですか。

A. 事件発生当時物議をかもし、今なお議論されている例として、NIFTY-Serve現代思想フォーラム名誉毀損事件(1994年提訴)というのがあります。これは、日本の電子ネットワーク上で「名誉毀損」が問われた初めてのケースです。

事件の詳しい経緯はというと、パソコン通信の主催会社ニフティーの主催するニフティーサーブの現代思想フォーラム(通称:FSHISO)に設置されている電子会議室「現代思想フォーラム」の中のある電子会議室にニックネームを使って参加した原告が他の会員と意見を交わしていたところ、被告は原告の発言に反発し、原告の実名を調べた上で原告個人を名指しで中傷し続けたというものです。

この件で東京地裁裁判長は電子会議室に書かれた「発言」は多数の会員が読むことができると言及し、「発言は公然性を持ち、原告の社会的評価を低下させるに十分」を判断しました。その上で、会議室の管理人(システムオペレータ)については、「電子会議室の運営・管理を委託されている地位と権限を考えると、他人の名誉を傷つける発言が書きこまれたことを具体的に知った場合には、削除するなどの措置をとるべき義務がある」と指摘、パソコン通信主催者のニフティの責任については、契約などからシスオペとの間に指揮監督関係が認められるとして、「使用者責任に基づき、シスオペが原告に与えた損害について賠償責任がある」としました。結果として、原告の訴えは部分的に認められ、上記の三者に賠償金の支払いが命じられました。

この判決はシステムオペレータに名誉毀損を防ぐための作為義務を認めた点や、事業者の管理責任まで問うべきなのか、といった点でも注目されています。

パソコン通信における「少数意見でも自由に発言ができる」という利点が狭められるのではないか、と表現の自由が侵害されることを危惧する声もあがっておりますが、匿名性を悪用して汚い言葉が氾濫しているのもまた、パソコン通信の現状です。この事件は、今後のネットワーク社会の運営の法との関わりが言及されたのとともに、パソコン通信の抱える問題に一石を投じる結果となりました。(今村)

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Q. インターネット上で有害な情報が流れた場合、どういった対応がなされるものなのですか。

A. まず、非常に問題なことなのですが、日本ではまだインターネット上における有害情報の定義が明確になっていないようです。機関毎に違っていたり、まだ定着していなかったりと、そういった段階です。また、インターネットの性質上、その運営に関して明確な管理責任を負う団体というものは存在しません。以前は情報の受容に関しては自己責任であるという考えが一般的でしたが、インターネットが今日のように普及してはそういったルールでは収まらなくなっているのが現状です。

というように、規制すべき対象の規定が曖昧なままでありながら、有害情報による被害が増えつつあるというの事実です。では、そういった有害情報に対して現在実行されている規定手段にはどういったものがあるのでしょうか。上でも触れましたが、公的機関による法的規制では整備が追いつかないほどにインターネットの膨張は早く、また、国家間の法的な強調も必要となり非常に困難な状況になっています。

では、有害情報にはどのような対処をすればいいのかということになると、現実的な手段としては、公的手段に頼るのではなく、情報受信者側で行うフィルタリング(ふるいわけ)の方がより効果的であるといえるのではないでしょうか。これは、「有害」という社会毎に異なる曖昧な概念を規定するのを、発信者ではなく、受信者に求めたものであるといえるでしょう。

フィルタリングをしてくれるソフトウェアは市販されており、方法の種類は幾つかありますが、有害であると認識した情報をブロックし、受信者の目に届かないようにするものです。まだソフトによって質のばらつきはあるようですが、様々な試行錯誤を繰り返し、急速な発展を遂げています。また、日本においては、電子ネットワーク協議会が、平成8年11月に「インターネットにおけるフィルタリング機能普及の検討開始」平成9年8月に「インターネットにおけるフィルタリング機能の構築開始」を報道発表したように、その質を向上させるための動きも活発に行われています。しかし、一般利用者のフィルタリングソフトの利用、関連知識はあまり浸透しているとはいえません。フィルタリングはその知名度・認知度がネックになっているといえるでしょう。

今後、フィルタリングソフトの普及にともない、公的機関による法規制も充実すれば、インターネット上の有害情報への対処はより進んだものになるでしょう。(今村)

参考  インターネット上の有害情報に対する規制の有効性(慶應義塾大学文学部図書館・情報学科平成10年卒業論文) 中瀬雄介    http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/sotsuron98/nakase98.html

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Q. 顔文字にはどのような種類のものがあるのですか。 

A. グー(http://www.goo.ne.jp)で「顔文字」で検索したところ一般結果が20058件ありました。その中で二つほど顔文字を掲載しているサイトを挙げておきます。

次に顔文字の一例を挙げておきます。

  1. 感情表現
  2. キャラクター (^◎^)バブゥ (o|o)  <゚)#))彡 8(*^^*)8
  3. ゲーム _(・・)/◇ホイ (ノ^o^)ノ ⌒⊂●⊃ リーチ!
  4. スポーツ ( ^o)ρ┳┻┳°σ(o^ ) ギリギリ (;`ー´)o/ ̄ ̄ ̄ ̄~ >゚))))彡
  5. 挨拶 \(〜O〜)/おはよぉ (*^o^*)オ(*^O^*)ハ(*^o^*)ヨー
  6. 踊り♪└|∵|┐♪└|∵|┘♪┌|∵|┘♪
他にも様々なジェスチャーを表す顔文字がありましたが、詳しい例は上記のURLにアクセスしてください。

最後に顔文字の特徴と傾向をまとめましょう。

  1. 派生的、複合的に新しい顔文字の種類が作成される傾向にある。
  2. 同一の顔文字が複数の見出し語を共有する場合、顔文字の意味は多義的である。
  3. 一部の顔文字は見出し語がなくては顔文字の意味がわからないものが存在する。
  4. 効果音や擬音を表す文字と併用してその意味を明確にする。

2100個の顔文字は意味の上では200種類程度であり、多くの顔文字は元となる顔文字から派生している語であることがわかりました。このことから顔文字だけではその意味はかなり曖昧であり、文脈や補足説明を加えなければ理解できない文字であることがわかりました。(佐京)
 

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Q. 顔文字はどうして普及したのですか。

A. 会話において相手の感情を理解し、お互いの十分な意思の疎通を行うために、相手が話す言葉とその内容の他に相手の表情、仕草、振る舞いといった視覚的な情報と、声の大きさ、抑揚、調子といった聴覚の情報や、相手の持つ雰囲気といった感覚的な情報によって総合的に相手の感情や意図を判断し、また相手に伝える場合も同様に言葉以外の情報伝達手段を用いて相手の理解を得ようとします。

しかしeメールやチャットのような文字だけの会話や情報交換では、視覚的情報や聴覚的情報は排除されお互いに言葉の内容だけしか伝えることができません。そのため文字による会話は実際の会話と比べて殺伐とした雰囲気を作り出し、意思の疎通がうまく計れない場合がありお互いに誤解を生む可能性があります。次の例文を見てみましょう。

@ A:「昨日、Cさんと遊園地に行って来ました。」  
B:「むっ」
A A:「昨日、Cさんと遊園地に行って来ました(^-^)」 
B:「むっ(`-´)」
B A:「昨日、Cさんと遊園地に行って来ました(^-^)」 
B:「むっ(-_-?)」

Aの会話ではBさんはAさんに腹を立てていることがわかります。Bの会話ではBさんはAさんの発言に対して疑問に思っていることがあることがわかります。@の会話ではA、Bのどちらの感情をもっているかまではわかりません。またA、BではAさんは遊園地に行ってきたことに対して喜んでいることがわかりますが、@ではAさんはそのことに喜んでいるのかどうかはわかりません。このことから顔文字によって文字による会話での脱落した視覚的な情報を伝えることができ、文字の会話に話者の感情を表現しやすくなっています。

顔文字は感動詞に意味を補足し話者の感情を表現することができるため、普及した原因のひとつであると考えられます。またメールやチャットでは従来の文字による情報交換であった手紙などに比べて相手の反応がすばやく帰ってくるので、話者は文字で会話しているような感覚を持つが、顔文字によって実際に会話しているような雰囲気を作り出すことができる。このことも顔文字が普及した原因のひとつであると考えられます。(佐京)

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(C)池田証寿、石垣佳奈子、浜良人、上野千沙、遠藤育子、佐京大祐、高田智和、舘正哉、野刈真愉子、文野領、2001-2002